【はじめに】
かつて「布団といえば西川」と言われた時代がありました。
30年ほど前までは、「西川=安心」「西川=良い寝具」という言葉が自然に聞かれたものです。
しかし、時代の流れとともに販売方法も多様化し、今では「どこで買っても同じ西川」ではなくなりました。
一方で、スポーツ選手が愛用する「AiRマットレス」などの影響により、若い世代にも“西川”という名前が再び知られるようになっています。
さらに最近では、「おてごろ西川」という新ブランドも登場し、“手軽に西川品質を”というキャッチコピーで、幅広い層にアプローチを始めました。
良い変化もあれば、気になる点もあります。
今回は、専門店の立場から見た「今の西川」と「これからの付き合い方」についてお話ししたいと思います。
【1. ブランドは同じでも、中身は別物】
現在、「西川」と名のつく商品は非常に幅広く存在します。
直営店・量販店・通販サイト・テレビショッピング──どこでも「西川ロゴ」を見かけますが、実は中身がすべて同じではありません。
かつての「東京西川」「京都西川」「西川リビング」という3社が統合されたことで、会社は一本化し同じロゴの下で多様な価格帯の商品が生まれました。
そして、価格差があっても同じ「西川」と表記されているため、消費者にとっては非常にわかりづらい構造になっています。
つまり、“ロゴは同じでも中身は別物”。それが今の「西川」の現実なのです。
※統合前も「西川」ロゴの上や下に「東京」「京都」「大阪」という文字が入っているだけだったので分かりにくくはありましたが(;^_^A
【2. 「安くても西川だから安心」──本当にそう?】
最近の広告では、「羽毛以上の暖かさ」「これ一枚で冬も安心」「腰がラクになる」など、とても魅力的な言葉が並びます。
しかし、こうした言葉の多くは、「特定の条件下での体感」や「一部のデータ」を根拠にしているに過ぎません。
“どんな人にも必ず当てはまるわけではない”のです。
とくに羽毛布団においては、羽毛の種類(ダック or グース)、充填量、縫製方法によって暖かさも軽さもまったく異なります。
それでも「西川の羽毛布団」とひとくくりにされると、本当に良いものまで誤解されてしまう。
「“ブランド”は信頼を積み重ねた結果であって、信頼の代わりにはなりません。」
【3. 専門店が見ている“見えない部分”】
同じ羽毛布団でも、見た目や触り心地だけで判断するのは難しいものです。
羽毛の種類(グース・ダック)、洗浄度、側生地の通気性、キルトの構造──これらは見ただけではわかりません。
たとえば、ダックダウンは5〜7年ほどで空気を含む力が落ちやすく、ふくらみがあっても保温性が下がることがあります。
一方、グースダウンは羽枝が太くしなやかで、10年以上経ってもふっくら感が保たれることが多いです。
この違いを説明せずに「どれも同じ西川の羽毛布団です」と言ってしまうのは、お客様にとっても不親切です。
だからこそ、専門店は“見えない部分”を丁寧にお伝えし、お客様の生活や環境に合わせた提案を心がけています。
【4. 「売ること」より「続くこと」を大事に】
今の寝具業界では、通販やテレビショッピングが主流になり、売上を上げるためにキャッチコピーが重視される傾向にあります。
「腰にやさしい」「羽毛布団より暖かい」──そんな言葉があふれています。
しかし、本当に大切なのは“長く気持ちよく使えるかどうか”。
1年売れても、3年後に“もう買い替えたい”と思われる商品では意味がありません。
寝具は毎日使うものだからこそ、「売ること」より「続くこと」に価値があります。
私たち専門店が考える“良い寝具”とは、10年経ってもお客様が「これでよかった」と思えるもの。
そのために、価格だけでなく“使い続ける満足”を重視しています。
【5. 専門店が伝えたい「選び方」】
お客様が羽毛布団を選ぶとき、ぜひ次の5つを意識してみてください。
実際に掛けてみる。
→軽さ・肌触り・動きやすさを体で感じましょう。寝返りをしてみる。
→布団が逃げないか、背中が出ないかをチェック。厚みを比べる。
→同じ重さでも、羽毛の質でボリュームは変わります。仕立て・縫製を確認する。
→マス目の数や縫い方で、羽毛の偏りやすさが変わります。アフターメンテナンスを聞いてみる。
→打ち直しや丸洗いの対応があるお店を選ぶと安心です。
これらは、パンフレットやウェブサイトでは分かりにくい部分。
“実際に見て・触れて・確かめる”ことが、失敗しない最大のコツです。
【6. これからの「西川」との付き合い方】
ここで誤解のないように言っておきたいのは、「西川の布団が悪い」と言いたいわけではありません。
むしろ、長い歴史の中で培われた技術や品質管理は、他の追随を許さないほど素晴らしいものです。
問題は、「その良さをきちんと伝えられる環境が減っている」こと。
もちろん、企業が生き残るために販売方法を広げていくことは理解できます。
ただ、その過程で「どの商品も良い」「どれも腰に良い」「どれも羽毛より暖かい」といった、聞こえの良い言葉だけが先行してしまうと、お客様は本当に自分に合った寝具を選びにくくなってしまいます。
専門店としてお伝えしたいのは、“ブランド名ではなく、中身を見て選んでほしい”ということです。
価格だけではわからない違い――羽毛の質、キルトの工夫、耐久性、使い方の提案――そうした部分にこそ、寝具の「本当の価値」があります。
私たち専門店は、そうした“違いを伝えること”を使命としています。
「西川の名前がついているから安心」ではなく、「あなたに合った寝具だから安心」と言っていただけるよう、これからも誠実に、丁寧にお客様と向き合っていきたいと思います。
【まとめ】
老舗ブランドが築いてきた信頼を守るのは、売ることではなく“伝えること”。
安いから悪い、高いから良い──そんな単純な話ではありません。
大切なのは、「自分に合うか」「長く安心して使えるか」。
そして、その判断を支えるのが、地元の専門店です。
私たちはこれからも、お客様が“買ってよかった”と10年後に思える寝具を提案し続けたいと思います。
🪶 西川の商品を扱い続ける理由
それは、老舗の誇りと技術を信じているから。
ただし、「どの西川でも良い」わけではなく、
「この西川なら、お客様の眠りを守れる」と確信できる商品だけを届けたい。
それが、私たち専門店の使命です。
ちょっと愚痴っぽくなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
