眠りは、足し算と引き算でできている
― 素材より大事な“重ね方”の話
前回のコラムでは、
羽毛・綿・ウール・シルク・麻という
それぞれの「素材の性格」について整理しました。
けれど、ここでひとつ大事なことがあります。
実は――
素材そのものよりも大事なのは、“どう重ねるか”です。
寝具は単体では完成しません。
眠りは、「足し算」と「引き算」で整えていくものなのです。
寝具は“組み合わせ”でできている
掛け布団1枚ですべてが決まる。
そんな単純な話ではありません。
羽毛布団+毛布
ウール肌掛け+綿ケット
真綿布団+薄手の羽毛
麻ケット+エアコン調整
どれも正解になり得ます。
問題は、
今の体温に対して
何を足すか
何を引くか
なのです。
足し算とは「厚くする」ことではない
足し算とは、
保温力を足す
吸湿性を足す
肌触りの安心感を足す
重さ(包まれ感)を足す
不足している“機能”を補うことです。
寒い人と汗かきの人では、
足すべきものが違います。
足す=厚くする
ではありません。
引き算ができないと、眠りは重くなる
多くの人が苦手なのが引き算です。
暑いのに布団を減らさない
エアコンを強くして寝具はそのまま
重さを「安心感」と思い込む
これは、引くべきものを引いていない状態です。
最近の住宅は気密性が高く、
昔よりも“引き算が必要な環境”になっています。
「夏でも冬用羽毛」という考え方について
近年、テレビなどで
夏でも冬用の羽毛布団を使い、
エアコンで室温を下げて眠る
という提案が紹介されることがあります。
理屈としては理解できます。
もし室温を冬と同じ環境まで下げられるなら、
冬用の寝具を使うことも成り立ちます。
ですが現実には、
夏に冬と同じ室温まで下げるのは容易ではない
下げ過ぎれば身体への負担も大きい
電力や環境負荷の問題もある
という側面があります。
仮に「一年中20度前後に管理する」という前提であれば、
寝具もそれに合わせた設計(例えば合い掛け程度)を考えるべきでしょう。
問題は、
寝室環境と寝具の話がセットで語られていないことです。
素材単体の話だけが広がると、
足し算と引き算のバランスが崩れてしまいます。
眠りは、
寝具だけでも、エアコンだけでも整いません。
両方をどう組み合わせるかです。
重ね方で体温は変わる
同じ羽毛布団でも、
毛布を内側に入れるのか
外側に掛けるのか
で体感は変わります。
同じウールでも、
肌側に置くか
外側に使うか
で湿気の抜け方が違います。
これは流行ではなく、
素材の性格の問題です。
だからこそ、
「テレビでこう言っていたから」ではなく、
自分の環境に合わせて考えることが大切です。
季節はグラデーションで変わる
眠りは、
・今日は1枚減らす
・今日は薄いものを足す
という微調整の積み重ねです。
夏仕様・冬仕様と極端に分けるよりも、
足し算と引き算で整えるほうが自然です。
素材は“役割”
羽毛は軽く保温する
ウールは湿気を調整する
綿は受け止める
シルクは肌に寄り添う
麻は熱を逃がす
素材は主役ではなく、役割を持つパーツです。
パーツは組み合わせてこそ意味を持ちます。
まとめ|完成形は固定ではない
寝具に絶対の正解はありません。
季節で変わる
年齢で変わる
住環境で変わる
だからこそ、
何を足すか
何を引くか
を考えられることが大切です。
眠りは、足し算と引き算でできています。
次回は、
寝室環境(温度・湿度)を含めた
具体的な組み合わせ例を整理していきます。
